《漂流する細胞の記憶【露】》
Memory of drifting cells
2020年 F0号  (W18.0×H14.0cm)
販売価格¥33,000(税込)

技法[型押し彩色に白墨]

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cAMP(サイクリックアデノシン一リン酸)は細胞内で漂う小さなメッセンジャーとして、記憶の物語を紡ぐ鍵を握る。

cAMPはPKAを呼び覚まし、シナプスを強化、CREBを通じて遺伝子に長期記憶を刻む。
海馬でLTPを導き、過去の瞬間を未来へと繋ぐ架け橋へ。まるで漂流する旅人が、脳の広大な海を渡りゆくような美しい様子が留めることなく身体中を巡り、歳を取るのだ。

例えばcAMPの異常はアルツハイマー病等による記憶の光を曇らせる病に直結するのだが、PDE阻害薬は希望の風を吹かせ、現在記憶を再び輝かせる可能性を秘める。

科学は日々進歩し、画家はその歴史を記録する。

小さな分子が我々生物の中で織りなす姿は、始祖から子孫へと渡り歩く、壮大な旅そのもの。
この作品が生きることの喜び、宇宙から見た自己の存在を見直す切っ掛けになることを祈る。